中高生のみんな、これから“学校”のルールが変わるかもしれないよ【落合陽一インタビュー】

「なんで勉強しなきゃいけないの?」「なんで制服があるの」なんていう学校にたいする素朴な疑問は、誰でも一度は感じたことがあるはず。逆に一度も疑問を持ったことがない人は、ちょっとまずいかもしれません。

 

なぜか? それは近い将来、世の中の、そして学校のルールがチェンジするかもしれないから。

 

そのとき、今みんなが学校や塾でしている勉強は通用しなくなってしまうかもしれない。

 

現代の魔法使い、落合陽一って?

 

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今回インタビューをさせてもらった落合陽一さんは東京大学で博士号を取得後、メディアアーティストとして活躍しながら筑波大学で助教として自分の研究室を運営するほか学長補佐として活躍。「現代の魔法使い」と呼ばれる人です。

 

ちなみに、なぜ魔法使いなのか? まずは下の動画を見てください。

Pixie Dust
超音波で白い粒子を浮かせて、自在に動かしています。まるで小さな妖精が集まって、私たちにメッセージを贈ってくれているよう。

 

Fairy Lights in Femtoseconds
空気分子をプラズマ化して、光で3次元の像をつくりあげています。実は上の動画のように、このプラズマで描かれた妖精は触れることができるんです。

 

テクノロジーを駆使して、まるで魔法にしか見えないような現実をつくりあげる落合さん。

 

そんな落合さんにこれから訪れる未来の話、そして来るべき未来に備えて私たちは今どうすればいいのか。お話を伺いました。

 

コンピューターで、こんな未来がやってくる!

 

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—落合さんがどんなことを研究しているのか、教えてください

 

「これまでの世界は、

・テレビのようにマスメディアから全員に同じ情報を届ける

・工場のラインで同じものを大量生産する

この2つのアイデアをベースにしていたんです。ぼくの研究をわかりやすく言うと、そういったこれまでの世界をコンピューターを使ってどう違った形にしていくかということです」

 

—?? どういうことでしょう?

 

「情報の届け方の話でいえば、自分にしか音が聞こえないスピーカーがあれば、全員伝達型ではないですよね(実は上のPixie Dustの技術の応用で実現可能で、既に製品化しているそう *下記動画参照)。今、ひとりひとりに違う情報を届けるにはどうしたらいいか、工学的にアプローチしています。

わかりやすく言えば、同じ場所にいる人に、1人には日本語しか聞こえない、もう1人には英語しか聞こえないという状態をつくることもできます。

 

工場のラインも、鉄や木など、全然違う素材のものが流れてきたのをコンピューターで認識して、加工する。そうするとすべてを同じ素材のもので作る必要がなくなります。その加工法も研究対象です」

 

みんな違うデザインの上履きになるかも

 

—だんだんわかってきました。

 

「学校で講演をするときに、『君たち、なんで同じ上履きを履いているかわかる? 』って話をよくするんです。そうするとみんな、『安いから』と答えます。

 

正解です。工場で大量生産するとコストが安くなります。でも大量生産品だけど、全部違うデザインにする、なんていうこともできるような世界になるかもしれない。

 

そんな世界をコンピューテーションナル・ダイバーシティと呼んでいるのですが、そういった多様性を実現できるようにしていきたい」

 

能力の差はモチベーションで生まれるようになる

 

—コンピューテーション・ダイバーシティが実現したら、他にどんなことが起きますか。

 

「例えば、身体能力の差はコンピューターが補完すればいいわけです。コンピューターのサポートがあれば、片足がなかったり、片腕がなかったりというような、標準化の時代には「身体障害と呼ばれた特徴」も関係なくなり、パラメータでしか過ぎなくなる。むしろ時間が守れないような人の方がはるかに迷惑ですよね」

 

—なるほど。そうなると、どのような部分で人の能力の差は生まれるんでしょうか?

 

「経験では絶対に差が出ますね。あとはやりたいと思うことがあるかどうか。モチベーションによる差はかなり出ると思います。身体に関することはかなりの確率でコンピューターが補完できるので、メンタルの部分でいろいろな人の能力の差がでてくるでしょうね」

 

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先生はなんで一時停止できないの?

 

—今の学校について思うことはありますか?

 

「たくさんありますよ。それはやっぱり今の教育が良くないから。学校の授業はテレビと一緒です。クラスの全員がスマホでYoutubeを見ているのだったら一時停止できるけど、今、先生を自由なタイミングで一時停止したら授業が終わらないですよね。

 

それは先生という装置が一個しかないから。もう学校の授業の枠組み自体が多様性のある仕組みに向いていないんです」

 

—確かに…。

 

「テストもそうです。なんで試験中に携帯電話を使ってググってはいけないのか、考えてみましょう。この世の中からインターネットがなくなることはないです。それなのに、携帯電話が無い状態で試験をするって意味があるんでしょうか?

 

社会人になっても、『私は携帯電話が無い状態では優秀です』なんて人を企業は雇いたくないですよね。『それは山で遭難したときに役立ちそうですね』とか、そんな程度のものです。社会に出れば他人と相談して結果を出すということが当たり前なのに、今の学校教育はそんなことが当たり前ではないんです。もしインターネットに繋がる状態でテストしたとしても基本的な公式などが使えなければ時間以内に問題を解き終わりませんから、そもそも何も覚えなくなるなんていうことはない、ですし」

 

大学入試が変われば学校も変わる、はず

 

—どうして今の学校教育はそうなってしまっているのでしょうか

 

「それは私たち大学のせいです。大学受験では試験への持ち込みが不可で、大学が作った問題に回答するという形式が採用されているからです。

 

私も大学の運営側にいるので、そんな状況を変えたいと思っています。でもあともう数年経ったら、きっと大学の試験が変わっているから」

 

—具体的にはどのように大学の試験は変わっていくとよいでしょう。

 

「単純に持ち込み可能な入試でも、点数に差が開くような問題を設定すればいいと思うんです。『Yahoo知恵袋で聞いてもいいよ、どうせ答え出ないから』みたいな問題を作るということです」

 

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落合さんの中高生時代、学校への想い

 

—落合さんが学生時代だった頃から、学校への疑問は感じていましたか?

 

「そうですね、僕の時代はすでに携帯電話を持っている学生はたくさんいたので、なんで携帯電話を持ち込んじゃいけないんだろうって。当たり前のようにダメだって言われるじゃないですか。それのなにがダメなんだろうって思いますよね。中高生だったのでおかしいと感じながらも『とは言ってもね』と思って、したがっていました。大人になった僕は『とは言ってもね』と言わないと決めたので、今はその体制を壊す方に回っています。

 

今、自分が学生だったらN高校も魅力的な選択肢の一つですね。実際、有名中学や有名高校という学校のブランドイメージってもうあまり関係ないですよね。僕自身、メディアアートをしていて、出身校で得をしているとは感じないですし。ただ「今の社会」では有名中高に面白い奴が集まりやすいのも事実だと思います」

 

8歳からプログラムを描いていた

—落合さんは、どんな子どもだったんですか?

 

「特に何もやりたいことはなかったけど、コンピューターをいじるのは昔から得意でしたよ。8、9歳ぐらいからプログラムを書いたり」

 

—8歳でプログラミングをするきっかけがあるんですか?

 

「私の家庭は父も母も文系で、パソコンが身近な環境ではなかったです。Windows95というマイクロソフトの新しいOSが出始めたころで、お店に置いてあったのを見たのか、なぜか僕が欲しいっていったみたいで。祖父にねだって買ってもらいました。当時はパソコンも40万円ぐらいする高額なものだったのですが、多分祖父のテンションはすごく高かったんだろうと思いますね。小学生に買うには大きい金額ですから笑」

 

—なにかパソコンでしたいことがあったんですか?

 

「いや、特になかったです。単純にかっこよさそうだったから欲しくなって、いじってみたら楽しかったんですよ。ホームページや掲示板を作ったりもしていましたが、一番ハマっていたのはCGのソフトでした。CGで動画をつくるのは、すごく楽しかったです」

 

—それ以外に音楽も好きだったんですよね。

 

「3歳の頃から音楽を習っていました。和音の構成についてだったり音楽理論の基礎があったので、6歳ぐらいのときには曲を作ってたりしていました。こういう基礎は不思議と忘れないもので、ずっと音楽も好きでした」

 

ロジカルなベースの上で、クリエイティブする

—曲の作り方のアプローチもロジカルだったんですか?

 

「僕の音楽の作り方は、コード進行や展開をあらかじめ決めておいて、その上に一番気持ちの良いフレージングを入れていくやり方です。どちらかというと枠組みを決めてから作ることが多いですね。ロジカルなベースを作った上で、どれだけクリエイティブなことをするかという考えをよくします」

 

—その考え方はメディアアートの場合も同じですか?

 

「そうですね。メディアアートの作品のアイデアを思いついても、実装ができなければ、ただの妄想ですからね」

 

—どういう順序で作品のアイデアを考えていくのでしょう。

 

「こういう作品をつくりたいから、そのためのテクノロジーを探すということもありますが、テクノロジーから出発して、こんな作品ができるという発想をすることもあります。

 

このテクノロジーとこのテクノロジーがあって、表現したい出口がある。さあ自由に組み合わせて何を作りますかという発想。技術の掛け算です」

 

最後に、プログラミングは“勉強”しちゃだめです

 

—ライフイズテックはITやプログラミングを使ってクリエイティブを学ぶ場です。中高生はプログラミングについてどう向き合っていけばよいでしょう?

 

「プログラミングについて言えば、プログラミングを覚えるために勉強するっていうスタイルが向いていないんです。プログラミングで何かをつくるのだったらいいけど、『とりあえずプログラミングをする』っていうことには意味がない。

勉強をしても、数年後にはそのプログラミングの言語や手法が通用しなくなるから、その数年間のために勉強したんだよねってことになってしまう。あくまで必要になったから勉強するっていうものですよね、今は学ぶ速度より時代の速度の方が速いから当座の現場的解決が実は毎回最先端になる。古典的な他の学問はこれと違って息が長いのでそっちの勉強を頑張るのも悪くないと思います。コンピュータサイエンスは今相当特殊だと思いますよ」

 

—なにを解決したいのかを考えて、実践しながら覚えるってことですね。

 

「プログラミングをするのであれば、教科書に蛍光ペンで線を引きながら勉強してちゃだめだよってことです、小さなやりたいことを積み上げていきながらプログラミングをしていくのが重要だと思います」