「Edu×Tech Fes 2019 U-18」プレゼン全文vol.2 8か国語を話すマルチリンガル 佐藤和音さん「自分の学びを選び、コーディネートする時代が到来しつつある」
今年3月に開催され、大きな反響を呼んだライフイズテックの一大イベント「Edu×Tech Fes 2019 U-18」。中高生トップランナー6人のプレゼン内容の詳細を本マガジンで紹介していきたい。
Bonan tagon! Kiel vi fartas hodiaŭ? (こんにちは、お元気ですか?※エスペラント語)
Mi chiamo Kazune Sato. Piacere de conoscervi. (佐藤和音です。お会いできて嬉しいです。※イタリア語)
Soy estudiante y voy a introducirme en las lenguas que hablo en este momento. (僕は学生です。今自分が話す言語で自己紹介をしてみます。※スペイン語)
我特别喜欢学习语言,我的爱好是旅游。今天非常感谢大家来到这里。 (僕は言語を学ぶことがとても好きで、趣味は旅行です。今日は皆さんきてくださりありがとうございます。※中国語)
오늘은 여기 계신 여러분과 함께 즐거운 시간을 보내고 싶습니다. (今日はここにいる皆さんと素晴らしい時間を過ごしたいと思っています。※韓国語)
Aujourd’hui je voudrais partager avec vous la raison pour laquelle je suis devenu polyglotte qui parle 8 langues, et mon expérience d’avoir étudié activement. (今日は自分が8か国語マルチリンガルとなった理由と。アクティブに学んだ経験について話したいと思います。※フランス語)
Bardzo mi miło! Dobrze! (よろしくお願いします。ありがとう。※ポーランド語)
皆さん、こんにちは。孫正義育英財団1期生、8か国語独学、国産マルチリンガルの佐藤です。最近は、ライフイズテックのテクノロジア魔法学校という学習教材にちょっとハマってます(笑)
テクノロジア魔法学校は、去年リリースされましたライフイズテックさんのプログラミングの学習教材になります。自宅からいろんなことが学べるんですが、ウェブサイトとかを学べるだけじゃなくて、ゲームも学べるんです。
他にこういったものが学べるところがありますか? プログラミング初心者なんですけれども、大分ハマりまして、実際お勧めですので、もしプログラミングを始めようと思われる方がいらっしゃれば、是非使ってみることをお勧めします(笑)
今日は、分岐点、テクノロジー、教育といったテーマで、コミュニケーションという分野から語ってくださいというふうに言われてますので、僕がマルチリンガルとして生きてきた中で、直面してきた分岐点、決断、その結果どうなっていったのかということを少しばかりお話しできたらなと思います。何か皆さんのお役に立てる情報がありましたら幸いです。
さて、マルチリンガルということでよくこういう質問をいただくんですね。「どんな感じの子供時代だったんですか」。一言で言うと、僕は自分の興味に没頭する子どもでした。
小さい頃から文字がものすごく好きで、生まれて初めて書いた字が「頭」という漢字です。また、言語の音もものすごく好きで、韓国語や英語の歌をあっという間に覚えてしまったり。
3歳ぐらいかな。フランス語の60分CD、親が海外でフランスにちょうど出張があったんで練習してたんですけど、それを60分丸々暗記してしまうっていうことをやったことがあります。
あと、マルチリンガルの例に漏れず、旅行が大好きです。旅行した時に必ず現地の言葉でコミュニケーションを取ってみるというのが我が家のルールでした。例えば、フランスに行った時なんですけど、母がマーケットに行って試食がもらえないんです。
何でかと不審に思って見てみたら、僕がフランス語でいらないよって断ってたんです。他にもタイに行った時、タクシーに乗ってタイ語でお釣りいりません、レストランでタイ語でパクチー抜いてくれないかなんてことを言ったものですから、家族中が仰天したことがあります。
自分にとって何がマルチリンガルの人生の始まりだったか。まず一つは、僕がマルチリンガルとして言語を使った時にそれが通じることが嬉しい。そしてさらにその通じた時に笑顔になってくれるのが嬉しい。そういったところでスタートしました。そういった子ども時代でした。
学校時代どうだったかということなんですが、これが厳しい人生だったんですよ。ディスプラクシア(統合運動障害)という障害を持っていて、手先が不器用だったんですね。
例えば、漢字ドリルやるじゃないですか。筆圧のコントロールが難して、教科書体にものすごくこだわるものですから、それそっくりに書こうとして、1ページやるのに2時間かかることもざらでした。蝶結びは2日間かけて8時間練習したこともあります。不器用でも頑張ってるってことをしっかり見てくださる先生ももちろんいるんですけども、残念ながらそうじゃなくて、勉強はできるのに不器用なのは親が甘やかせたせいだというふうに偏見を持つ人も少数派ながらいるんです。こういう先生が担任になってしまうケースっていうのが、小中高の時に3回ぐらいありました。そういう先生って、他の生徒の前で平然と人格否定してくるわけです。人格否定すると、先生自らが子どもたちの前でいじめのモデルケース、先生公認のいじめになるわけです。他の子どもたちも真似して、いじめがエスカレートするといったことになります。
そういったこともあって、実は僕、3回ほど転校を経験してるんですが、これが僕の最初の分岐点です。いじめから撤退して環境を変えるのか、それともそのまま耐え忍ぶか。いじめを受けてる最中って、多分いじめを受けている方々も分かると思うんですけど、自分が何でいじめてるのかって考えちゃうんです。自分がいじめを受けてる原因は? そもそもこの世に存在価値がなんなのか? 俺が駄目だからいじめられるんじゃないか? というふうに考えたんですね。正常な考えができなくなります。できなくなった時に、僕の親は黙って海外に連れ出して、「世界はこんなに広いんだ」と教えてくれました。世界何か国ですか、193とかありますよね。世界には、いろんな宗教、文化、国、人がいる。いじめっ子の常識は果たして世界標準だろうかということをよく自分に問いかけてました。
あともう一つ、支えになってくれたのが、『孫子の兵法』です。無理に戦況が苦しい時、パワーバランスが違いすぎて不利な時、勝算が薄い時、その時は戦いを継続するんじゃなくて、撤退してでも自分の戦力を立て直して、次に臨むのがいいと言われてます。自分が置かれてきたいじめっていうのはまさにこういう状況だったんで、自分もいじめから撤退をして次の環境に行くということを選んできました。僕の3回目の撤退が、全日制の高校から通信の高校に移るというもので、これがちょっと大きなものになります。それまで自分は運動ができなくても、勉強で頑張ろうという思いがあったので、学校では中高オール5、成績学年トップを守ってきました。ところが通信に行かなきゃならなくなって、「お前の人生終わったな」っていじめっ子に言われました。一般的なレールから外れてしまったことは、自分もものすごく不安でした。どん底です。でも、その中で思ったんです。自分は何も変わってない。好きなことは変わっていない。通信という環境でできることやってやろうじゃないかと。「人と同じになろうとしたってなれないんだから、いっそのこと違うことをやってやろう」というふうに開き直ることにしました。分岐点2つ目、人と違う道です。
そして、自分の興味を追求することにした僕は、まず手始めに高認を取得しました。さらに学校以外のコミュニティを求めて、メンサにも入り、好きだった外国語の学習も継続をして、いつの間にか、8カ国語マルチリンガルになってました。さらに、MOOC(Massive Open Online Courses)。僕は中学校の時から始めていたんですが、これを本格的にやることにして、ハーバード、UCバークレーといった海外の大学のコースを修了することができました。僕が一番最初に受けたのは中国史の講座になります。こういうふうにMOOCをやっているうちに、これなら海外大学の授業も困らないで受けられるんじゃないか、海外大も進路に入れられるんじゃないかと思うようになりました。地元が茨城県だったんですけど、まずそういう先輩がいない。周りにそういう環境がない状況だったので、海外大なんて雲の上みたいな存在だったんですけど。
そういうことを考えるようになって、その時にまたもう一つ、大きな転機が訪れます。実は僕はイギリス英語の響きにすごく惚れ込んだことがあって、中学の時に、アメリカ英語からイギリス英語にしました。独学で全部です。単語も文法も発音もです。その結果、イギリスの学校から自分のRP(Received Pronunciation)を認められて、奨学金をもらうことができました。留学のチャンスです。イギリス人は、とにかく発音、アクセントを聞くだけで出身地まで分かってしまうというくらいです。アメリカ英語主流の日本っていう環境にいて、イギリス英語も学ぶ事って大変なんです。どういうことかっていうと、例えばアメリカ英語で凄いRをまくだとか、イギリスだと違うんで。例えばスペルが違う単語を書いたらバツにされたりだとか、あとは発音が違うんだとか、そういうことをよく言われたりはしたんです。なので、 BBCの番組を使って独学するということをよくやりました。
そして、苦労したんですけど、人と違うってことを生かして、むやみに同じになろうとしないで、自分の興味に邁進した結果として、こういうものがチャンスとして到来したんじゃないかなと今では思ってます。この経験を生かして、今僕が運営しているのが、ZOOMOOCというコミュニティになります。「自分で自分の学びを創造する」をテーマにした中高生をメインターゲットにしたMOOCの情報コミュニティです。MOOCは僕にとっては、「海外大はこんなものだ」、「海外の高等教育はこんなものだ」っていうビジョンを与えてくれたもので、自分に大きな選択肢を広げてくれました。例え、いじめで苦しんだとしても、今まで思い描いていた道から外れてたとしても、自分で自分の学びを創れるんだったら必ず夢を追い続けられる。そしてMOOCはそれを支援できるツールの一つです。
現在、テクノロジーの進歩のおかげで、住んでいる場所、経済環境といったものにとらわれたり、制約を受けることなく、自分の学びを追求するといったことが可能になってます。僕がこのZOOMOOCを作った目的はこうです。日本の子達にも、是非このMOOCというものを使って、自分のポテンシャルを広げて行ってもらいたい。そして日本、世界、宇宙を舞台に活躍してもらいたい。そういった思いと、日本でまだ知名度も低いMOOCをZOOMするという意味で、ZOOMOOCと名付けました。昨年の10月にやったのがこのキックオフイベントで、教育のスペシャリスト4名の方々にご協力いただき、満足度97.3%という評価です。日本の若者の間でも、ものすごく自分で自分の教育を作りたいと考えている人たち、好きなことを学びたいと考えてる方が予想以上に多いんだということを実感しました。
最後に、ネルソン・マンデラ(元南アフリカ共和国大統領)という僕が尊敬してる方の教育に関する言葉でこういうものがあります。「教育は世界を変えるために、あなたが使うことができる最も強力な武器である」と。今、テクノロジーのおかげで、例えば色々な新しい学びの環境、それこそLoohcsだったりミネルヴァだったりそういったものもそうですが、自分で自分の学びを選べる、選択する、コーディネートする。そういった時代が到来しつつあります。
そういう時代が来る中で、自分は何者で何を目指すのか、どんな自分になりたいのか。どんな社会を作り上げたいのか。まさしく根源的な問いです。これを考えていくことが、僕らの今後の羅針盤になっていくのではないでしょうか。ありがとうございました。
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