【レポート】「テクノロジア」活用!茨城県プログラミング・エキスパート育成事業/8ヶ月にわたる県との連携がメンバーの「作品」に結実

posted on 2019/03/15

ライフイズテックは3月3日、茨城県土浦市の県立中央青年の家で、昨春から茨城県と連携して取り組んでいた「プログラミング・エキスパート育成事業」の最終発表会を行い、本事業で選出されたメンバー(中高生)35人が自らのオリジナル作品を披露した。

発表会には、県教委の幹部、大学の識者らが見学に訪れ、プレゼンを行ったメンバーからは「学んだ知識をさらに深めて教える側になりたい」、「パソコンに触れるのが楽しくなっ」、「開発者の気持ちが分かるようになった」などと自身の成長を語った。

本レポートでは、8ヶ月にわたって行われたディズニー・プログラミング学習教材「テクノロジア魔法学校」を活用して「プログラミング・エキスパート」を育成するという本事業の軌跡をたどるとともに、メンバーが最終的にどのようなオリジナル作品までスキルを昇華させたのか。メンバーの具体的な作品や声を通して紹介したい。

ライフイズテックと茨城県教委は、全国トップレベルのプログラミング能力を持つ中高生を育成し、未来を創造できるエキスパートを茨城県から輩出しようと、昨春から本格的に本事業をスタートさせた。

本事業では、茨城県内に通学する中高生160人を募集。昨年5月から6月にかけ、県内4会場で40人ずつ選考を兼ねたワークショップを実施。その後、個別面談や専門家の意見も聞き、最終的に40人が選出された。

選出されたメンバー40人は、ライフイズテックが手がけるディズニー・プログラミング学習教材「テクノロジア魔法学校」を活用し、昨年7月から12月まで、Webサイト、メディアアート、ゲームの各制作についてオンライン上で学んだ。

自分の力でオリジナル作品を作れるようになることが最終目標にしていたことから、オンライン学習のサポート役を、ライフイズテックのメンター(大学生講師)8人が担った。

昨年9月以降は、オンライン上のサポートをさらにフォローするため、月1日程度、茨城県内でワークショップを行ってきた。

そして最終的に、3日の発表会に訪れたメンバーは35人(中学生17人、高校生18人)。メンバーは6チームに分かれ、前日2日から合宿形式で開発をスタートさせた。

これまで8ヶ月間という長期にわたって、メンバーが「テクノロジア魔法学校」で学んだ知識、ワークショップで得た経験を2日間で最大限生かしてもらおうと、各チームにはメンター2人がサポート役に入った。

発表会では、35人のメンバー一人一人が、自ら制作したwebサイトやゲーム、メディアアートなどのオリジナル作品について、2会場に分かれて、プレゼンテーションを行った。

発表会で披露されたメンバーの作品を紹介するとともに、本事業への応募のきっかけ、「テクノロジア魔法学校」で学んだ手応えなどについて列記していきたい。

中学2年の男子生徒は、ちょうど学校でインフルエンザが流行していたことから、「そもそもインフルエンザってどんな病気なのだろう」と考え、インフルエンザの型やワクチン、症状をなどを分かりやすくまとめたwebサイトを制作した。

「インフルエンザをよく知ることで、予防につなげてほしいと思った」と話す。

男子生徒は小学生の頃、ロボット科学教室に通ったことがあり、元々プログラミングには興味があった。応募は、本事業を新聞で知った父からの勧めだったという。

8ヶ月にわたって取り組んできた学習教材「テクノロジア魔法学校」については、「ストーリーが楽しい。どんどん次の物語に進みたくなる。ジェム(宝石)を集めてレッスンに向かう学習方式がとても分かりやすかった」と話した。

将来の夢として、「少子高齢化による労働人口の減少を補えるようなロボットを作りたい。そしてそんなロボットを紹介するwebサイトも自分で作ってみたい」と話した。

別の中学2年の男子生徒は、自分の好きな音楽や映画、車を盛り込んだ自己紹介のwebサイトを制作した。さらに、三角関数をメディアアートに変換したものをトップ画像に置いた。

この手法は、「テクノロジア魔法学校」で学んだWebサイト、メディアアート、ゲームの3つの基礎スキルを組み合わせる「クロスカテゴリー」と呼ばれるものだ。

▲「テクノロジア魔法学校」で学習する際の実際の画面

男子生徒は、新聞記事で本事業を知った母から応募を勧められた。小学4年の頃から、父が仕事で使っているワードやエクセル、パワーポイントを見よう見まねで一人でやっていたという。

「テクノロジア魔法学校」については、「コード書くのは初めてだった。難しいと思っていたけど、(サポートキャラクターの)ミーミルが分かりやすくヒントを出して教えてくれるので大丈夫だった(笑)。自分でもノートにメモを取りながら復習した。あとは、ストーリー展開が魅力で、プログラミング学習抜きでも楽しめた」と話した

また、「今まで、webサイトを見る側だったけど、『どういう風にできているんだろう』とサイトの裏側が気になるようになった」と自身の変化についても話していた。

中学3年の女子生徒も、趣味や習い事、部活を紹介した自己紹介のwebサイトを作った。

プログラミングについては知識も含めて初心者だったが、将来理系に進みたいことと、プログラミング必修化という世の中の流れを考え、母と相談して本事業に応募した。

「テクノロジア魔法学校」に関して、「新しいことを習得すると前に覚えたことを忘れがちだけど、そこはミーミルの手厚いサポートがあるので(笑)ゲームのレッスンが楽しくて、ゴールした時は達成感がありました」と話してた。

将来は、「情報工学の分野も視野に入れて理系に進みたい」という。

高校2年の男子生徒は、人の役に立つことで何かできないかと考え、学校の文化祭のwebサイトを作った。サイト上では、各出し物の待ち時間が更新されるよう工夫した。

中学2年の時から自宅のパソコンでプログラミング言語を学んでいて、応募は担任の先生から勧められた。

コードを実際に書いたことはなかったが、「テクノロジア魔法学校は、コードの学習とストーリーが平行している感じで楽しかった」と話した。

さらに、「基礎知識を生かして、もっとプログラミングを学びたい」と意欲的だ。

高校1年の男子生徒は、自分が所属するバスケットボール部を紹介するwebサイトを制作した。活動内容はもちろん、部活で必要な物品までリンクを貼り付けるなどの工夫を加えたし。

学校のチラシを見て本事業に応募したが、最初はコピーアンドペーストも知らなかった。

「テクノロジア魔法学校」で学びながら、「コードを打ち込んで、それが実際に動くのが楽しかった。物語が面白いので、学びながら映画を観ているような感覚でした」と振り返った。

プログラミングがこれからも続けたい。自分のスキルをもっと上げて、今回制作したバスケ部の紹介サイトをブラッシュアップさせたい」と話していた。

別の高校1年の男子生徒は、「ゲームを自分で作りたい」という幼稚園の頃からの夢を実現させた。

プレーヤーが動かす主人公は、部屋を巡回する敵キャラに見つからないよう、鍵をとり、部屋から脱出しなければならないというゲームだ。主人公は一定時間、「幽体離脱」することができるのがこのゲームのユニークな点だ。

男子生徒は高校のパソコン部に所属し、「競技プログラミング」経験者だが、「テクノロジア魔法学校」が他の教材と違う点について、「作品を作りながら文法を学ぶところ。文法だけだと途中でどうしても飽きてしまう」と話していた。

将来は「今回、自分でゲームを作るという夢を具現化できたので、今後は自分で一人でコードを書き、ストーリーやBGMも考えるゲームクリエーターになりたい」と夢を膨らませた。

メンバーたちによる発表会を終え、プログラミング教育の専門家で、必修化を推進した大阪電気通信大学の兼宗進・教授、茨城県教育庁の森作宜民・学校教育部長からメンバーに向けた講評があった。

兼宗教授
「みんなプログラミングをやってみて達成感があったと思う。私は『プログラミングは楽しい』ということを言い続けてきた一人で、それが発表を聞いて証明された気がしました。今度はみんなが自宅や学校でプログラミング楽しかったよということを広めてくれれば嬉しい。プログラミングはこれからますます注目される分野。今回の活動はここで一区切りだけど、色々なコンテストもあるので、継続してほしい」

森作部長
「みんなも2日間という短い期間で何を作るかすごく考えたと思う。いろんな発想、工夫があってのそれぞれの作品で、聞いていて楽しかったです。今の日本のいろんな日本の課題にも目を向けてもらって、『こんなことやったらもっと世の中が便利になるんじゃないのか』と考えて、それを実際に作っていってもらいたい。皆さんの発想、工夫がこれからの社会を変えることになるかもしれないと思いました」

2人の講評を受けて、ライフイズテックでリアルサービス事業全体を統括し、今回のイベントでMCを務めた丸本徳之は「必修化の流れで、プログラミングを学ぶ人は増えてきていますが、その技術を使ってものを作り出していく人はなかなかいません。そんなことをみんなは楽しみながらやることができた。自信を持ってほしい」と呼びかけた。

その後、体験会、個別認定式を経て、ライフイズテックのカリキュラムを統括する金澤直毅が、8ヶ月という長期にわたった本事業を振り返った。

金澤の言葉は、本事業に関わった全ての方の思いを代弁するともいえるので、本レポートの最後に紹介したい。

「今回、オンライン上をメインにしてプログラミング学習をしてもらいました。家で一人で勉強することはとても大変だと思う。普段の勉強とは他に、20から30時間のコーディングをやる中で、基礎のスキルが身につきました。手で何かを工作することと同義のことをみんなはパソコンを使ってやっています。デジタルのもの作りは最速で形になり、最も遠くまで届けることができます。なかなかうまくいかなかったことも『こうすればもっとうまく解決できるかもしれない』という手応えも感じていると思います。ぜひ、デジタルなもの作りを継続してもらえたらいいなと思います

ライター:宮本俊一
プロフィール:1981年、群馬県生まれ。2006年、読売新聞東京本社入社。記者職を中心に歩む。子どもの未来に繋がる仕事がしたいと2018年11月、Life is Tech! に転職。仕事の傍ら2013年からエッセーを書き、「第18回約束(プロミス)エッセー大賞」(産経新聞社主催)などで入賞。「誰にでも分かりやすく」をモットーに、旬な話題を随時アップします!