ライフイズテックレッスン教材監修 前文部科学省教科調査官 上野耕史氏より推薦コメント公開

 白鴎大学の上野です。

 中学校技術・家庭科技術分野に関して平成10年版では解説作成協力者として、平成20年及び29年版では担当者として学習指導要領改訂に携わらせていただきました。

 平成29年学習指導要領では、「情報の技術」に「ネットワークを利用した双方向性コンテンツのプログラミングによる問題解決」を追加しました。

 この新しい内容について、早くから現場の先生方の支援のための教材開発を進めてくださったのがライフイズテックの皆さんです。私自身、よりよい教材としていけるよう、監修の立場からご協力しております。

 本教材は以下のような素晴らしい特徴をもっております。ぜひ、子ども達が今後の社会を生きるために必要となる資質・能力を身につける授業実践のために役立てていただければと思います。

①「テキストプログラミング」に無理なく取り組むことができる

 本教材はテキストプログラミング言語を主軸にした学びを提供しています。これまでの中学校教育では、入力ミスが少なく入力が容易なビジュアルプログラミング言語が使われていることが多かったと思われます。GIGA端末が導入された直後は、まずタブレット端末への順応が求められたこともあり、直感的に理解しやすいブロックタイプの言語などが多く導入されました。

 一方でこれらの言語には、ブロックの中でどのような処理が行われているのかがブラックボックス化して理解しにくい、また、細かな機能要件の変更が出来ないものも多いなど、技術理解と問題解決能力の育成を目指す本質的な学びにつながりにくいという欠点がありました。

 このことを踏まえて、今では「中学校でも本当はテキストプログラミング言語を使いたい」と考えている先生方も多いと思います。さらに、多くの生徒が高等学校で「情報Ⅰ」を学ぶ状況において、このような傾向はより強まると思われます。生徒たちがGIGA端末に慣れ親しんでいる現在では、適切なサポート機能さえあれば、テキストプログラミング言語を使用した授業が現実的なものとなります。

 本教材は、指導時間数や生徒の状況に応じた学びを実現しつつ、それぞれの学びの場面で適切な助言が得られるサポート機能を充実させています。例えば、ひとつの入力ミスでエラーが出てしまうことがテキストプログラミング言語の難しさの一つです。これに対しては、打ち間違いを発見するヒントが丁寧に示され、どのテキストを変えることでアウトプットがどう変わるのかが視覚的に理解できる仕様になっています。

 そのため、生徒に対して無理がなく、先生方にも不安が少ない状態で、GIGA端末導入当初には難しかった本質的な学びが実現できるようになっています。



②問題解決の能力と態度を育める

 生徒たちが現代社会とつながり、やがて社会の問題を解決していけるようになるためには、問題を解決する能力と、解決していこうとする態度を育成することが必要です。

 そこで、前項で述べた通り、多くの場合ブラックボックス化されてしまうプログラミングについての知識や技能を習得するだけでなく、問題を解決するための考え方も身につくようにしています。さらに、社会における困りごとを解決できたという経験をさせることで、次の問題の解決にも主体的に取り組んでいこうとする態度の涵養も目指しています。

 本教材の基礎編では、パン屋さんが抱える困りごとに対し、それを解決する機能をもったコンテンツ(Webサイト)を制作するという「問題解決」に取り組んでいきます。

 (1)問題を解決するための「課題の設定」、(2)「設計」、(3)具体的なプログラムの「制作」、(4)問題解決の過程や結果の「評価」という活動を通じて、プログラミングによって生活や社会における問題を解決するための考え方が身につきます。

 そして応用編では、生徒個々人のオリジナルコンテンツ(Webサイト)の制作を通じて、生活や社会の問題を自ら発見して解決する能力を養う学びへとつながるようにしています。

 このような学習は、やがて普段目にしている様々なコンテンツが各々の問題を解決する素晴らしいものであること、そして先人が多くの工夫をしてそれらを作り上げてきたことへの理解へとつながります。社会を支えている情報の技術,そしてそれを開発してくれた先人への感謝の気持ちや、それらを大切に活用していこうとする態度も育んでくれるでしょう。

 そして、基礎編で社会における問題を解決できたという経験をした生徒たちは、より自然な形で問題解決の対象を広げていきます。身の回りから社会や地域の問題へと視野を広げたり、「webサイトを他の教科や分野で活用できないか?」といった視点の変換をしたりする姿が多くの学校で生まれています。
 このプロセスの中で、情報を閲覧する相手を意識して誤情報を避ける、表現を精査するなどの情報モラルの意識醸成にもつながると考えています。


③子どもの実態に応じた授業が実現できる

 技術分野では、各内容の履修学年の指定はありません。1年生で学習する場合も、3年生で学習する場合もあります。また、小学校等におけるプログラミングの経験が生徒によって異なることもあると思います。一人一人の生徒に問題を解決できたという満足感や成就感を味わってもらうためには、生徒の実態に応じた授業を実現することが大切です。本教材では、どのような先生でも子どもの実態に応じた授業を実現することができるようになっています。

 本教材では、問題解決の手段として、数種類の機能を無理なく追加できるようにしています。これらの機能を選択したり、組み合わせたり、さらには工夫・応用して他の用途に転用したりすることで、生徒は多くの問題の解決に取り組むことができます。

 ただし、プログラミングの授業は、先生によって特に得意不得意が分かれやすいものだと思います。プログラミングに苦手意識のある先生は、特に「ミスを見つけてあげること」に苦労されているものと思います。「なぜ動かないのか?何がいけないのか?」というつまずきに答えることは難しいものです。逆にこの問題を回避しようとすると、どうしても画一的で形式的な授業しか出来なくなってしまいます。

 本教材では、生徒一人一人の状況に応じてミスを抽出し、ヒントを与える機能が備わっているので、先生は安心して進行のサポートに入りやすくなると思います。

 自分が見いだした困難な問題を、自らの力によって解決する中で、子ども達は問題を解決できる力とともに、次の学習にも、さらには今後の生活や社会における難しい問題の解決にも主体的に取り組もうとする態度を身につけてくれるはずです。


さいごに

 技術分野は、技術によってよりよい生活や持続可能な社会を構築することができる資質・能力の育成を目指す教科です。プログラミングの仕方を理解するだけでなく、既存の技術の素晴らしさを理解するとともに、自ら問題を見いだし、それを技術によって解決することができる能力と態度を育成するために、本教材を活用していただけることを期待しております。