小説「君の膵臓をたべたい」の装画で脚光を浴びた、22歳売れっ子イラストレーターloundraw の原点

繊細で透明感のある色彩の絵は、様々な小説作品の装画やキャラクターデザインに起用されるなど、ジャンルを問わず活躍中のイラストレーターloundrawさん。

10代でデビューし、学生時代から数々の作品を手がけてきた売れっ子クリエイターの彼は、大学を卒業してから1年目の22歳。一見、順風満帆に見えるけれど、高校や大学など各節目で進路に悩んだことがあったそう。

『絵で食べていけるわけがない』。

そう考えたloundrawさんは、大学受験の際は美大を選択せず、大学卒業後も普通に就職するつもりでした。そこからなぜイラストレーターになる決意をしたのか、学生時代のことや創作活動について、お聞きしました。

 

褒められるのが嬉しくて始めた絵を”描く”ということ

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—loundrawさんがイラストを描き始めたきっかけはなんですか?

「小学校2年のとき、『名探偵コナン』の表紙を色鉛筆で模写したのが初めだったと思います。それなりに上手く描けて、同級生に見せて褒められると嬉しかったのでそれから描き始めました。小学生の頃はサッカーマンガを100Pも延々と描たりしてて(笑)」

—そうなんですね。では、本格的に絵を描くのに時間を費やし始めたのはいつ頃からなのでしょう?

「中学まではサッカー部で、小学校の夢もサッカー選手になることでした。ですが、やめてしまい、それからは絵を描くことに時間を割くようになったんです」

—その時はどんな絵を描いたのですか?

「中2になってからはもらったタブレットを使ったデジタルのイラストだけになりました。最初は女の子が描けなくて、ずっと男の子を描いていました」

—それは意外ですね!女の子の絵が代表的なイメージがありました。

「女の子を描くようになったのは、人にイラストを見てもらうことを意識するようになってからです」

 

「このままの決断でいいのか」。最後まで悩んだ高3の進路選択

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—中高生の頃に悩みはありましたか?

 

「人並みに悩んだのは、高校3年生の進路選択のときだと思います。理系の大学へ行くことは決めていて。当時の僕の人生観では美大を選択することはできなかったんです。

 

でも受験勉強をしている高校3年生の冬に『理系の大学で4年間、勉強だけをしていたらつらくなる』という思いに至って。すごく悩んで親に相談し、理系でありながら、デザインも学べる大学に進学することにしました」

 

—その後大学に入学し、学生の時プロデビューをしました。どのようなきっかけがあったのでしょう?

 

「インターネット上で作品を公開したことがきっかけだと思います。当時はsupercellさんをはじめ様々なアーティストが活躍していて、SNSからでもプロになれる可能性がありました。自分も投稿したいと思い、その積み重ねの結果、イラストを見ていただいた編集の方から連絡をいただきました」

※supercell・・・音声合成ソフト「初音ミク」を使った楽曲「メルト」がニコニコ動画で話題を呼んだ、ネットを中心に活動するイラストレーターやデザイナーがクリエイター集団。

 

—プロとして最初にお仕事をいただいたのはいつですか?

 

「大学生になってすぐの春に永田ガラさんの小説『星の眠る湖へ―愛を探しに―』の装画を依頼されたのがプロデビュー第1作でした」

※永田ガラ・・・日本のライトノベル作家

 

—そのときはどんな気持ちでしたか?

 

「自分のイラストにお金を払っていただけるのが新鮮で。できたらいいなと思っていたことが実現したのでとても嬉しかったです。書店という日常風景の中に自分の絵が並んでいるのがとても不思議な感覚でした。初めて見たときはすごく嬉しかったです」

 

—そこからお仕事も増えてきて、イラストレーターになりたいと思ったのですか?

 

「実は本格的になりたい、なろうと思ったのはここ1年くらいなんです」

 

—そうなんですか⁉

 

「はい。普通に勉強をしてきて普通に就職しようと思っていました。大学に入ってからも趣味でイラストは描いていて、1年生で初めてお仕事をもらったときは片手間でもいいから続けたいとは思っていました。

 

ただ、お仕事をいただいてはいたんですが、イラストレーターとしての仕事は未来永劫続くことが保証されていませんし、特に生活ができるほど報酬をいただくレベルには達していなかったこともあり、迷うこともなく普通に就職しようと」

 

—確かに金銭的なことを考えなければ、活動を続けていくのは難しいですよね。

 

「ところが大学4年生になるときに元電撃文庫でライトノベル編集者の三木一馬さんから色々とご提案をいただいたり、現在所属するTHINKRさんからマネジメントの話しをいただいたりと、この状況なら挑戦してみるのもいいのではないかと思いました。

 

僕が慎重な性格だからか周りの方々が後押ししてくれて。それから決意しました。なのでイラストレーターになりたいと思ったのは、ここ1年ほどのことなんです」

 

『この先にもっと楽しいことがあると思えること』が作品づくりの原動力

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—イラストレーターとして本格的に活動すると決意してから1年目とのことですが、loundrawさんの作品づくりの原動力はなんですか?

 

「『この先にもっと楽しいことがあると思えること』、これがモチベーションですね。

たとえば自分のイラストの活動が、今では書籍の装画やCDジャケット、アニメのキャラクターデザインなどへ徐々に移ってきています。どこかへつながって、自分を知らない新しい領域へ連れていってくれる、作品は自分の大事な船だと思っています」

 

大学の卒業制作として一人で個人制作したアニメ作品

 

中高生のときにしか感じられない感情がある。その貴重さをかみしめてほしい

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—イラストレーターを目指している中高生へ、アドバイスをお願いします。

 

「3つあります。

 

1つは、ちゃんと発表すること

僕も最初は恥ずかしかったんですけれど、人の目について知ってもらえないとやはり声をかけていただけません。

 

2つ目は、絵以外のことをたくさん考えるべき

イラストは社会の一部なので、依頼主が僕に頼んで“どういう人に何を伝えたいのか”、絵以外の部分、相手の考えていることをちゃんと聞くことが大切です。

 

3つ目は社会人としてちゃんとすること

これが一番大事かもしれません。イラストレーターは個人で活動するケースが多いですから、上司に指摘してもらえません。逆の立場でどういう人なら信頼されるかを考えるといいと思います」

 

—イラストを描くということだけでなく、仕事をする上では信頼関係が大切ということですね。

 

「色々と悩みはあると思います。でも、中高生のときに抱く感情の中には今の僕では絶対に感じられないものもたくさんあるんです。

その時間にとても多く費やしてしまったのは今思うとすごくもったいない。もっと学園祭などに参加していればよかったという思いがあります。

 

もちろん、後悔しないよう自分のやりたいことに全力を尽くすことは当然必要です。自分の人生が貴重なものであることをかみしめて、ふとした時には視線をあげて、たくさんインプットをしてほしいと思っています」

 

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今後は一人ではできないことを、たくさんの人と取り組んでものづくりをしていきたいと語るloundrawさん。笑顔で丁寧にインタビューに答えてくれた彼は、イラストレーターだけでなく、一人の人間としてとても素敵な方でした。

 

現在、約5年間プロとしてイラストレーターとして活動してきたloundrawさん初の個展が渋谷「GALLERY LE DECO」にて開催中。

 


個展のタイトル「夜明け前より君へ」には、進路などで悩んでいる中高生へ、

「生きいくって、これからもっと良いことがあるから頑張れる」と思ってもらえるよう、願いを込めているのだそう。

loundrawさんの作品が直接見れる貴重な機会。是非、来場してみてはいかがでしょうか?

 

loundrawさんの個展公式サイトはこちら