「私たちも社会を変えていく」アントレプレナーシップを発揮する大学生メンターの挑戦

posted on 2023/01/27

Life is Tech ! Schoolには、中高生を教える役割を持った「大学生メンター」が在籍しています。メンターとしての経験を生かしながら、​​アントレプレナーシップ(起業家精神)を持って社会で活躍している大学生も多数います。

その中から今回は、起業家としても活躍する田中寿美礼(たなか・すみれ)さんと、西田翔平(にしだ・しょうへい)さんにインタビュー。

ふたりは別々のチームでプロダクトを開発し、日本経済新聞社主催のビジネスコンテスト「全国大学ビジネスプランコンテスト2022」でそれぞれ賞を受賞しています。


大学ビジコン | 超DXサミット (Super DX/SUM)

 

社会を変えるイノベーター人材であるふたりに、起業・プロダクト開発の背景や、それらを通しての自身の成長、そして今後のビジョンについて伺いました。

教わる側から、教える側に。

ーーふたりは、Life is Tech ! Schoolで大学生メンターとして活動していますが、どのような経緯で始めたのでしょうか。

田中寿美礼さん(以下 すみれ):私は中学1年生の頃から、ライフイズテックのスクールとキャンプに参加していて、当時のメンターさんに勧められたのがきっかけですね。正直ずっと自信がなくて、メンターへの応募を見送っていたのですが、スクール生として見ていたメンターさんの姿がかっこよくて憧れていましたし、せっかくなら教える側になってみたいと思い、大学4年生の時に応募して始めました。

西田翔平さん(以下 まっくす):僕も、もともとスクール生でした。教育分野で起業するためにプログラミングを学びたいと思って、高校2年生の春にライフイズテックのキャンプに参加し、それ以来スクールに通っていました。メンターになったのは、以前からメンターさんに誘っていただいていたことに加えて、教育する側になることで見える景色もあるのではないかと思ったからです。

ライフイズテック スクールとは?
プログラミング初心者が1年間で実力者になれる中学生・高校生のためのIT・プログラミングスクール。
https://life-is-tech.com/school/

 

ーーなるほど。それと並行して、ふたりは社会課題を解決するプロダクトやサービスを開発し、さまざまなビジネスコンテストに参加していますよね。まっくすくんはスクール生時代から起業を見据えていたとのことですが、すみれさんは?

すみれ:私は、まっくすみたいに起業したいと思ったことは全然なかったんです。ただ、スクール生のときにメンターだった方が大学生で起業をしていたので、身近な存在ではありました。

本格的にビジネスコンテストに参加したのは、大学4年生の時です。いきなり周りが就職に向かっていくなか、私にはやりたいことがなかったので就職という選択肢を選べませんでした。そこで何か始めようと思い、ライフイズテックと丸井グループ共催の「​​Future Accelerator Gateway(通称:FAG)」でプロダクト開発に取り組んだのがきっかけで、さまざまなコンテストに参加するようになったんです。


Future Accelerator Gateway – 将来世代のアイデアから新規事業創出!

ペットが殺処分される状況を変えたかった

ーーそれでは、さっそくおふたりが携わっているプロダクトについて伺っていきたいと思います。まずは、すみれさんのプロダクトから教えてください。

すみれ:はい。「HATENA-COLAB」というチームで、NFT技術を用いた保護猫の支援を行っています。具体的には、保護猫施設で実際に保護されている猫ちゃんをテーマに、アーティストの方に絵を描いていただき、その作品をNFTアートとして販売します。その売り上げの一部を、ご協力いただいた保護猫施設に寄付またはさまざまな形で支援をするサービスです。


https://hatena-colab.com/

NFT技術を用いているので、ブロックチェーンによってその作品を買ったオーナーの所有権が保証されますし、アートを購入することによって、作品のモデルになった保護猫ちゃんを支援することに繋がります。ただ募金箱に寄付するだけでなく、NFTアートを通して直接的に動物を救うことができるんです。

 

ーーNFTアートを通じた保護猫支援。どちらも注目を集めているテーマですし、面白いアイデアですね。保護猫問題を取り上げたのは、どうしてですか?

すみれ:小さい頃から家で犬を飼っていて、中学1年生のときに亡くなってしまったのですが、それがあまりに悲しくて。そこで命の重さを知ったぶん、ニュースで殺処分されるペットの話題を見るのがいつも辛かったんです。責任を持てない人間のせいで、飼えなくなった子たちが保護施設に送られて、数が増えすぎたら殺される。こんな状況が早く変わればいいのに、と思っていました。

そんななか「FAG」でビジネスアイデアを考えることになり、やってみたいテーマとして浮かんだのが保護動物の問題でした。今までは自分で行動する術がなかったけれど、「FAG」でやればメンターさんに並走してもらってブラッシュアップできますし、つくったサービスで喜ぶ人がいたらいいなと思って取り組むことにしたんです。

ーー今まで抱いてきた課題を解決できるチャンスだったんですね。最終的な形に辿り着くまでには、どんな経緯がありましたか?

すみれ:実は、発表まで残り1か月というところで急遽、NFTアートに挑戦しようと方向転換したんです。

とはいえほぼ何も知識がなかったので、とにかくメンバーとインプットを重ねて、学びながら形にしていったという感じです。流行っているからNFTを取り入れたと思われがちなのですが、そういうわけではないんです。調べていくなかで、仮想通貨は現実のお金の送金と比べて手数料などのコストが安いと知り、「支援」という文脈にも親和性が高いと感じたので選びました。

 

ーー今協力していただいている保護猫施設とは、どのように繋がったのでしょうか?

すみれ:まずは私たちが住んでいる関西にある民間の保護猫カフェなどに、とにかく電話やメールをしました。その時点ではプロダクト自体できていませんでしたし、NFTと言ってもなかなか理解してもらえず、結構苦戦しましたね……。でも、中には興味を持ってくださる好奇心旺盛なオーナーさんもいらっしゃったので、丁寧にやりとりをしながら少しずつ繋がりをつくっていきました。

 

ーーすごい正攻法……! コミュニケーションを通して、皆さんの思いが伝わったんでしょうね。

すみれ:「FAG」は卒業研究のタイミングと重なっていましたし、3か月でプロダクトを完成させる短期決戦だったので、わけがわからないくらい目まぐるしかったのですが、賞を受賞できてほっとしましたね。

今は実際にNFTアートも売れていますし、活動を通じて縁がどんどん繋がって、全国の保護猫支援をしている方たちと一緒に新しい取り組みをする話も進んでいるところです。

心拍を可視化し、伝えられなかった心を共有する

ーー続いて、まっくすくんにお聞きします。すみれさんも参加していた「全国大学ビジネスプランコンテスト2022」で優秀賞を受賞したプロダクトについて教えていただけますか?

まっくす:はい。僕が所属する『e-lamp.』というプロジェクトでは、人の心拍に合わせて光るイヤリングを開発しています。僕たちは普段、コミュニケーションをとる際に表情やジェスチャーで相手の感情を推測しますが、なかなか本当の思いを上手く伝えられないことってありますよね。

この『e-lamp.』はチーム代表の山本愛優美さんのそうした課題感から生まれたプロダクトなんです。心拍を光で可視化し、これまで伝えられなかった心を「共有」する新しいコミュニケーションの形を目指しています。2020年から山本さんが一人でスタートし、僕は2022年からジョインしました。

https://e-lamp-official.studio.site/

ーー斬新なアイデアで、とても興味深いです。まっくすくんはなぜこのプロジェクトに参加することになったんですか?

まっくす:5年くらい前に、高校生でも起業家になれるのか疑問に思って「高校生起業家」と検索したことがあったんです。そのときに1番上に出てきたのが山本さんで、北海道にいながら本当に面白いアイデアで起業活動をしていてすごいなと。一方的に知っていたのですが、たまたま2021年の冬にとあるイベントで一緒に登壇することになったんです。

そこで『e-lamp.』についてのお話を聞いて、心拍を他者と共有するという体験そのものが新しくてワクワクしました。しかも山本さんも僕もアーティストのPerfumeさんが好きで、ライブで使うペンライトのような感じで、アーティストさんの心拍に合わせてイヤリングが光ったら面白いのではないかと盛り上がって。ちょうどエンジニアが足りていないと聞き、携わることになりました。

 

ーーすごい、画面越しに尊敬していた相手と時を経て出会い、一緒にプロジェクトに取り組むことになったんですね……! 現在、開発はどんな状況ですか?

まっくす:最新版の『e-lamp.』では、Bluetoothでスマートフォン上のアプリと連動して、色や明るさ、タイミングを自由自在に調整することができます。僕はエンジニアとして、この最新版『e-lamp.』のデバイスの中身と、それをスマホ側で制御するアプリの両方を担当しています。

ただ、やはりこの価値は「心拍を他者と共有すること」ですし、それはアプリの有無に関わらず、たくさんの方に共感していただけるものだと思うんですよね。2022年7月には、「未踏アドバンスト事業(※)」にも採択していただけたので、アプリに依存せずにデバイス単体の価値を磨きつつ、面白く横展開していけたらと考えています。

※ITを駆使してイノベーションを創出できる優れたアイディア・技術力をもつ人材が、自らのアイデアや技術力を最大限に活かし、起業・事業化にまでつなげていけるように育成、支援を行う事業。独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)が2017年から実施している。
2022年度未踏アドバンスト事業公募概要

 

「自分でも社会を変えていける」という実感

ーーふたりは、起業やビジネスコンテストへの挑戦を通じて、たくさんアウトプットし、フィードバックを得てきたと思うのですが、ご自身の中で変化や成長を感じることはありますか?

すみれ:私は「FAG」で初めてアイデアを実装してプロダクトとして発表するところまでやったので、まずそれが一つ大きな経験でしたね。スキルに自信がなくてもアイデアでなんとかなるんだなと感じましたし、課題に感じていることをビジネスで解決するという発想を手に入れたことで、自分でも社会に対してできることの幅が広がったなと思います。

そこから「HATENA-COLAB」で活動してきて、自分自身の成長を一番感じたのは、メンバーの変化を感じたときかもしれません。

 

ーーメンバーの成長を通して、自分自身の成長を感じた、と。

すみれ:はい。もともと率先してリーダーになるタイプではなかったので、いざ自分がまとめる立場になるとなかなか上手くいかず、チームづくりの難しさを感じていました。卒論の時期と重なっていたのでモチベーション維持も大変でしたし、メンバーの一人が「FAG」の期間中に活動を辞めると言い出したこともありました。

でもその後戻ってきてくれて、今では当時のことが考えられないくらい率先して活動してくれています。そういう姿を見ると、やってきてよかったなと思いますね。成長って自分では意外と気づかないけれど、周りが自分を信頼して一緒に前に進んでくれているということは、私自身も成長できているのかなと。

また、今は立ち上げメンバーの4人中2人が辞めて、代わりに後輩が2名参加してくれていますが、「HATENA-COLAB」を通じて起業や自分自身で活動することに興味を持ったと言っていて。それまで就職という選択肢しかなかった子たちにそう言ってもらえると、自分も影響を与えられているのかなと嬉しくなりますね。

ーーもともとすみれさん自身、やりたいことが見つからずにこの道に進んだわけですが、そこから後輩たちの新しい選択肢になっているのは素晴らしいですね。

まっくす:すみれと一緒で、実は僕らもチームの人間関係やモチベーション管理には課題を感じています。代表が一人でずっとやってきたところから、今ではチームの人数も社外で巻き込む人たちもどんどん増えていて、コミュニケーションに悩む部分もあります。

 

ーージレンマ……。組織が大きくなれば、それだけぶつかる壁も増えますよね。

まっくす:そうですね。ただ逆に言えば、社内の人間関係やコミュニケーション不足など、どの組織でもきっと抱えうる課題に学生のうちから触れられているのは、きっとこの先の成長に繋がるだろうなと思っています。

もちろん、エンジニアとしても前進していると感じています。今まではアプリばかり作ってきましたが、『e-lamp.』に入ったことでソフトウェア領域を超えた、技術的な分野での新しい学びを得ることができました。これらの経験が、ゆくゆく別のやりたいことにも繋がっていけばいいなと思いますし、それが僕自身のモチベーションになっていますね。

人との縁をキーワードに、好奇心を持って進んでいく

ーー恐れずにたくましく前進している様子が伝わってきました。では最後に、ふたりの今後のビジョンを教えてください。

すみれ:「HATENA-COLAB」としては、京都でNFTギャラリーをつくったり、保護猫支援団体と連携して情報発信をしたりしたいと考えています。現状NFTアートとして売れてはいるのですが、これからは実際に猫が救われていることがきちんと見えて、より購入者にとって支援している実感が持てるようにしていきたいです。

あと実は今、地域コミュニティにすごく興味があるんです。「HATENA-COLAB」の事業を動かしていくにあたって、本当に人の繋がりでここまでこられたなと思いますし、この一年くらいで人への興味が湧いたというか。地域づくりというとベタですが、大学のある和歌山紀の川市で地域の方たちと一緒に新しい取り組みを始めていこうと思っています。

まっくす:僕の将来的なゴールとしてはやはり、教育現場における多様性を拡張したいと思っています。ただそのためには新しい風が必要だと思っているので、一度自分の知っている教育から離れて、それ以外の分野で得た知見や知識を、最終的に教育の現場に還元していきたいと考えています。

『e-lamp.』に携わりながら、それ以外にも個人的にやりたいプロジェクトをいくつか進めていく予定です。さっきすみれから人の縁という話がありましたが、僕もこの界隈にいるとまさしく縁を実感する瞬間がたくさんあって。幼い頃からの自分の縁を可視化してみたらすごく面白かったので、この体験を会社としてお金を稼げる形でいろいろな人に届けていきたいなと思っています。


昨今、「アントレプレナーシップ(起業家精神)」という言葉を多く耳にするようになりました。ライフイズテックには「社会にインパクトを与えたい」という強い気持ちを持ち、課題を自ら解決しようとチャレンジしている大学生メンターが数多くいます。そこに一歩踏み出せば、切磋琢磨しあえる素敵な仲間との出会いがきっとあるはず。

ライフイズテックでは、こうしたアントレプレナーシップ溢れるコミュニティづくりを通して、これからも次世代の活躍を応援していきます!

すみれさんとまっくすくんも参加した、中高生を導くIT教育インターンシップ・研修プログラム「Life is Tech ! Leaders(ライフイズテック・リーダーズ)」は15期を募集中!

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