「理想の教室」を引き出すために
私たちには「理想の教室」の状態があります。
その状態となった教室を覗くと、隣の子のパソコンを覗きながら作品を見せ合う子がいたり、ヘッドフォンをつけながら黙々と作業している子がいたり、さらに、イスではなく地べたに座りお菓子を食べながら開発している子がいます。
みんな自由に、楽しそうに、それぞれのスタイルで作品の開発に取り組んでいます。一見バラバラにみえるのですが、心では全員がつながっているような不思議な一体感がある光景なのです。
こういう理想の教室の状態になった最終日の作品発表は、参加者全体で、作品のクオリティがとても高く、個性に富んだすばらしい発表をみることができるのです。
Life is Tech ! は、プログラミングの技術をただ教える場所ではありません。この場所なら自分のアイデアを自由に出せる、自分自身をさらけ出せる、どうすれば参加者の奥底にあるクリエイティブな力を引き出せるかを、実践経験と理論に基づき、綿密を学習する場を設計しています。
理想の教室を引き出す学習設計の3つのポイントをお伝えします。
1. Where(どこで?)
ひとつめは、「Where(どこで?)」です。
Life is Tech ! は、大学のキャンパスや、IT/ゲーム企業のオフィスでキャンプやイベントを開催しています。中高生にとって非日常であり、将来自分が行くかもしれない場所で学ぶことは未来の自分を想像させます。
さらに、空間づくりにおいては、参加者が五感で感じることを大事につくらなくてはなりません。教室全体がカラフルで楽しそうだなと視覚で伝え、聴覚には自分たちの好きなBGMが流れる、参加者がストレスフリーな環境をつくることを細かく配慮することが大切なのです。
スタッフには、「机の向きが5度変わるだけで、中高生の人生が変わる」と伝えています。
時として、あまり広くないスペースでやる場合があり、その際に角度5度違うだけで、狭くなったりして、ストレスフルな環境をつくってしまいます。
ちょっとしたストレスが5日間あると大きなストレスになります。
特に、はじめて参加した子は、Life is Tech ! ではなく、パソコンでの作業自体が嫌いになり、ITへの苦手意識が芽生えてしまうと、今後の彼らの人生に大きく影響してしまうからです。
2. How(どうやって?)
2つ目は、「How(どうやって?)」です。
Life is Tech ! のプログラムですが、大きく分けると、学習やものづくりをする「開発の時間」と、参加者との関係性をよくするような出し物やレクリエーションの「アクティビティの時間」があります。
初日や2日目は「アクティビティの時間」を長めに設定し、3日目から最終日にかけて「開発の時間」を増やしています。
楽しいからはじめ、開発に集中していく、この緩急のあるバランスが重要なのです。
また、中高生に子供だましは通用しません。オープニングなどの演出面も大人でも驚くような高いクオリティのものを目指しています。
3. Who(誰が?)
3つ目は、「Who(誰が)」です。
Life is Tech ! では5-6名のチームで学ぶのですが、チームにひとり「メンター」と呼ばれる大学生のスタッフが教えています。
大学生である理由としては、「対話による学び」を重視しているからです。
中高生にとって、大学生は少し未来の姿。気軽に質問やアドバイスに乗ってもらったりすることで、技術力だけでなく、自分の進路も見えてくるのです。
メンターは、かなり高い能力を求められます。
技術力だけでなく、チームを率いるリーダーシップ、個性を引き出すファシリテーション力、楽しませるためのコミュニケーション力、最終日までに作品を完成にもっていくマネジメント力が必要です。
実は、昔は、メンターごとにお任せしていて、かなり属人的になっていました。
しかし、メンターによって、中高生のアウトプットや成長に驚くほど差があったのです。
誰が?の部分は「学習の場」において、もっとも重要な要素です。
だからこそ、よいメンターを分析し、試行錯誤しながら、100時間の研修プログラム「リーダーズ」をつくりました。今なお、進化をし続けるこのプログラムは、初心者の大学生を、優秀なメンターに育てることができます。
現在、全国に500名弱メンターが所属していますが、特に経験値の高いメンターは、本当に優秀でIT系のコンテストや様々な領域で活躍する、中高生の憧れになるようなスーパー大学生ばかりです。そんな優秀な彼らが、中高生を導くということは、とても贅沢なことだと思っています。